太陽光パネルの大量廃棄に備える、再資源化市場の現実味
ニュースの概要
調査会社のFortune Business Insightsが、太陽光パネルのリサイクル市場について2034年までの成長を見込むレポートを公表した。使用済みパネルの発生量が増えることを背景に、回収や分解、素材の取り出しを担う事業が広がるという見立てである。パネルの寿命は一般に25年から30年とされ、2000年代に急増した導入分がまもなく役目を終える。つまり、これまで将来の課題だった廃棄が、実際の業務として動き出す段階に入る。レポートは市場規模やシェアを示す形をとるが、数字そのものより大切なのは、この産業が何を前提に成り立つのかという点だ。本稿ではその前提を、回収網、技術、採算の三つから読み解く。
引用元: 太陽光パネルリサイクル市場規模、シェア |成長レポート [2034](Fortune Business Insights)
分析・見解
寿命を迎えるパネルが一斉に出てくる時期
太陽光パネルは長く使える設備である。一方で、設置が集中した時期があると、廃棄もまとまって訪れる。日本では2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(=発電した電気を決まった価格で買い取る仕組み)が始まり、導入が一気に進んだ。この時期のパネルが寿命に近づくのは2030年代半ばである。
問題は、時期が読めるのに受け皿が小さいことだ。現在の処理能力は、将来の排出量に比べて見劣りする。市場が伸びるという予測は、裏返せば、足りない設備を作る余地が大きいという意味でもある。
取り出せる素材と、取り出しにくい素材
パネルの重さの約6割から7割はガラスである。次にアルミ枠が約1割強を占め、銀や銅、シリコンといった価値の高い素材はごくわずかにとどまる。
多くの処理工程は、アルミ枠を外し、配線を取り、ガラスを分ける流れで進む。しかし、ガラスはセルと樹脂で貼り合わされており、きれいに剥がすのが難しい。割れたガラスは板ガラスに戻せず、建材や路盤材などの低い用途に回りがちだ。
ここに、この産業の核心がある。重量の大半を占める素材の価値が低く、価値の高い銀は量が少ない。つまり、技術の進歩とは、銀や高純度シリコンをどれだけ安く取り出せるかの競争になる。熱で樹脂を分解する方法、薬品で溶かす方法、刃物で削ぐ方法など、複数の手法が競っているのが現状である。
回収の仕組みが整うかどうかが採算を決める
リサイクルの採算は、処理技術より前に、パネルをどう集めるかで決まる。パネルは屋根や野立ての発電所に散らばり、撤去も運搬も人手がかかる。輸送費が処理費を上回る例も珍しくない。
欧州では、生産者が回収費用を負担する制度が先に整った。日本では、発電事業者に廃棄費用を積み立てさせる制度が進んでいる。どちらも、費用を誰が持つかを先に決めておく点で共通する。制度が曖昧なままだと、不法投棄や放置の不安が残り、事業者も設備投資に踏み切れない。
見落とされやすい視点は、廃棄の前の再利用である
市場予測は処理量を軸に語られがちだ。しかし、使用済みと判断されたパネルの中には、発電能力がまだ八割以上残るものも多い。これを中古品として売る流れが太くなれば、リサイクルに回る量は予測より後ろにずれる。
逆に、中古の品質を見分ける検査が未整備なら、安く不確かな品が出回り、結局は早期に廃棄される。リサイクル市場の大きさは、中古市場の健全さに左右されるのである。
ビジネスへの影響
発電事業者は廃棄費用を今のうちに見積もる
発電所を持つ事業者は、撤去と処分の費用を事業計画に織り込んでおく必要がある。パネル1枚あたりの処理費は、地域や業者で差が大きい。複数社から見積もりを取り、運搬距離も含めて比べておくとよい。
積立ての時期や額を決める際は、処理費が将来下がる可能性も考える。ただし、下がることを前提に積立てを減らすのは危うい。
新規参入を考える企業は回収網と出口を先に固める
処理設備を持つ企業にとって、最大の課題は安定して原料が届くかどうかである。工場の稼働率が低いと、固定費が重くのしかかる。撤去業者、保守会社、保険会社と組み、パネルの流れを確保するのが先決だ。
出口も同じくらい大切である。回収したガラスやシリコンを誰が買うのか、販売先を契約で押さえてから投資を決めたい。素材メーカーと共同で、用途を開発する動きも有効だろう。
中古流通と検査サービスにも商機がある
使用済みパネルの出力を測り、再利用できるものを選ぶ検査は、まだ担い手が少ない。検査、保証、再販までを一体で提供できれば、リサイクルと中古の両方の入り口を握れる。大量廃棄を問題として捉えるだけでなく、仕分けの技術を商品にする発想が求められる。